質問66 取引先社員の横領
売り買い相殺で取引をしているA社の社員Bの横領が発覚。
私の務めるC社はA社に売掛500万の残。
これだけならただ回収すれば良いだけなのですがここで問題が。
というのはBに頼まれ架空預かり在庫2000万の書類に、私が勝手に会社の
各印をかつて押してた。
A社の上司と弁護士は、売掛残金の500万はB個人から回収せよとのこと。
そして預かりの書類は、Bから私が強制的に印を押さされた架空書類と認め
た上で、各印を押しているのだから2000万の預かり分も支払えと言ってきます。
支払わない場合は、金額相当の商品で解決をとのこと。
A社の上司と弁護士からは、私もBの仲間と思われている節がありますが、
決してそのようなことはありません。
Bを信頼していたとはいえ、架空の書類に印を押したことに大変反省と後悔を
するばかりですがこのままA社の言うなりに、こちらとしてはまっとうに商売し
た上での売掛金500万はA社からではなくB個人から回収ということ、実際は
払う必要がない架空の2000万をこちらがかぶるということに納得がいきませ
ん。
こちらが支払いを拒否すれば、訴えられ文書偽造等の罪に問われることにな
るのでしょうか?
支払いの件と罪の件、回答をお願いしたいです。
よろしくお願い致します。
回答66
弁護士A
500万円の売掛金と2000万円の会社の損害賠償債務は相殺され,貴方の会
社と貴方が相手の会社に1500万円の支払い義務を負うことになります。
私文書偽造同行使で処罰されるでしょうが,当然詐欺の共犯を疑われるでし
ょう。
ただ,詐欺については証拠がなく,処罰されないでしょう。
松原弁護士 回答66
1 まず、A社とC社との間の寄託(預かり在庫)契約が成立したかどうかを検討
します。
寄託契約が成立するためには、A社とC社の代表取締役間の意思が合致
することが必要ですが、本件の場合、どこにも代表取締役が登場する場面
がありません。
2 そして実態は、寄託行為者は、権限のないB,受託行為者は、同じく権限の
ない貴方で、かつA社も本件が「Bから私が強制的に印を押さされた架空
書類と認め」ていますから、もともと貴方のした行為が、C社の行為と見な
すことは困難であり、契約は、不成立または無効といえます。
3 なお貴方の言う「各印」とは、会社名のみ印した四角い印、即ち「角印」だ
と思われます。
そうだとすれば、この角印には、C社の代表取締役の氏名とともに使用さ
れる代表取締役印と違って、C社を代表する行為であることを示すものと
はみなされません。
4 かくしてC社は、A社に対して、何らの寄託物返還債務又はそれに代わる
金銭債務をありませんから、売掛金500万円全額を請求できます。
5 次に、貴方の個人責任について考えます。
貴方が、会社の「角印」をC社に無断で使用したことは、C社との関係で私
文書偽造にあたります。
そしてこの偽造文書を信用することによってA社が被った損害については、
貴方は、個人として不法行為責任を負わねばなりません。
本件のような場合、通常は、損害の発生が考えにくいところですが、具
体的事情によっては、損害が発生していることがあり得ます。
6 貴方のご質問では、C社の動向が全く出てきていません。しかし、本件
では、C社の対応の仕方が非常に重要です。
たとえば、仮にC社が、貴方を私文書偽造で被害届を提出しないとなれ
ば、貴方に対するA社の私文書偽造の告発は、事実上効力を発揮しな
い可能性があります。
また、C社は、A社に対する売掛金500万円の請求をどうするつもりなの
でしょうか?
7 C社の対応次第では、貴方も弁護士さんを立てて、自己を正当に防衛す
る対策(私文書偽造についてもBに強要されたことを強調して刑事責任を
小さくすることやA社およびC社への適切な対応等)を検討すべきだと思い
ます。
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